症例 1: 2歳で外科治療をおこなった難治てんかん症例


現病歴

2歳男児.平成5年12月,在胎37週にて頭位自然分娩にて娩出された.生後2週より,頭部を前屈させる発作が出現し,日に5回ほど認められ,生後2ヶ月より目をパチパチさせ両上肢を伸展挙上させる発作を伴うようになった.生後5ヶ月には,発作は5-6回のシリーズを形成するようになり,一日に5−6回の series 形成をきたすようになったため,某市立こども病院へ入院. 追視及び笑いは2ヶ月で認められ首の座りは未だ十分ではなかったが明らかな退行はこの時点では指摘されていない.CT,MRでは左硬膜下水腫を指摘された外には異常なく,EEG では左 central-occipital 及び middle temporal 領域よりの spike を認め複雑部分発作の診断で投薬が開始された.γ-Glb 及び CBZ を中心とした投薬にて発作回数の減少及びシリーズ形成が消失したため,CBZ に加え VPA, NZP, AZA 等にて外来フォローされていたがその後,発作が頻発するようになり,同病院に入退院を繰返しTRH療法を含め多種多剤の投与をされたが発作は全く抑制されず,精神運動発達遅滞が明らかになってきたため外科治療を検討するため長崎大学医学部小児科および国立長崎中央病院脳神経外科へ紹介された.

神経学的所見

左上肢優位の不全片麻痺が存在し、頚座は不十分 著明な hypotonia を認めた。 developmental score 6ケ月.

発作

顔面眼険を中心とする myoclonic seizure が日に数十回、 無動、凝視から発声を伴い右上肢の挙上へと続く複雑部分発作 が日に10回程度認められた。

画像所見

CTでは,左側の脳萎縮と左頭頂葉に石灰化と思われる高吸収域を認めた. MRでは左頭頂葉皮質にT1で灰白質と等信号でPDで著明な高信号を呈しT2でやや高信号を示す異常信号領域を認めた. 同部位はGd投与後も増強効果は全く認められなかった.surface anatomical imageでは病変部位は大部分は中心後回に存在し,一部中心前回に及んでいることが示唆された. 99m-Tc-ECD SPECTでは, 間欠期に左頭頂葉は低灌流を示し,発作時にこの部位はやや高灌流に反転していた.

脳波所見

発作間欠期の頭皮上脳波では,左 frontal-central-parietal-occipital および右 posterior temporal を中心に両側同期性の Spike and wave を認めた.

侵襲的検査

前頭葉および頭頂葉の grid electrode を示す.中心に Rolandic vein が位置している. 複雑部分発作では,頭頂葉中心後回外側より発作波は起始していた. Eloquent areaに seizure focus が存在するため functional mapping を行った.正中神経刺激による体性感覚誘発電位は同定できず,運動領野刺激でも上肢顔面の動きなどの運動反応は検出されなかった.このため, 皮質運動感覚機能はこの時点では廃絶している可能性が示唆された. 以上より,頭頂葉皮質形成異常又はDNT等の奇形性腫瘍に伴う難治性複雑部分発作と診断した.硬膜下電極による観察中,複雑部分発作は1日に100回近く観察され myoclonic seizure に関しては countless で更に髄液漏を合併したため2月12日に緊急手術を実施した.

手術と結果

腫瘤を含めて Rolandic vein の後方の脳回を約 4x3 cm にわたり切除した. 術直後数回 myoclonic seizure があったが,術翌日からは発作は消失した. 病理組織では, astrocytic compornentに胞体がエオジンに富む大きな細胞を認め,いわゆる、binucleoted cell が存在し、石灰化像が散見された. GFAP陽性細胞が確認された. 低倍では明らかな層構造は認めず, 高倍率では大きな細胞内にNissl顆粒を認め成熟した ganglion cell であることが示唆され病理診断は ganglioglioma であった. 術後のMRで術前認められた異常信号域は消失し, 術1か月後の脳波では Spike and wave は消失している. 1週間より活動性が向上し,約3週間で首が固定され,右上肢の麻痺も改善傾向にある.developmental score も,術後 2ヶ月で 8ヶ月と術前と比べ2ヶ月の進歩が認められた. 現在術後3か月と Follow up 期間は短いが発作は消失している.