けいれん重積状態のまま搬送され、焦点切除術を施行した2小児例
 
 
(症例 1)生後2カ月女児

生後1日に全身けいれんで発症し、一時はジアゼパム、フェノバルビタールで抑制されていた。しかし、生後36日よりコントロール不能となり、ミダゾラム持続静注、フェノバルビタール大量投与を行うも、発作は1日50回以上の頻度で生じ、生後87日目に重積状態のまま当科に搬送された。発作は、顔面、眼球の右方偏位を伴い、右上下肢伸展、左上肢屈曲するフェンシング肢位を示す部分発作であった。 

入院時MRIでは、右前頭葉広範囲の focal cortical dysplasia あるいは hemimegalencephaly を示す所見、すなわち、 T2 強調画像で右前頭葉は腫大し、皮質は著明に肥厚していた。 T1およびプロトン強調画像では、異常な信号強度はなく、増強効果も認めなかった。 

発作時の ECD-SPECT では、右前頭葉に高還流を認め、頭皮上脳波では、右前頭極、前側頭葉より発作が起始していた。 以上の所見から、右前頭葉の形成異常部位に発作焦点があると考え、焦点切除術を施行した。 

術中脳表電極の位置と切除範囲を頭蓋単純写真上に示す。 術中に記録された発作時脳波では、MRIで認められた形成異常の全領域ではなく、 A1-5、B3-4の範囲に限局しており、この部位を含む前頭極からおよそ4cmの前頭葉切除を行った(術後MRI)。 術後、発作頻度は減少し、ミダゾラム持続静注は中止できたが、その後も発作が持続するため、生後109日、再手術を施行した。術中脳波モニタリングで前回の切除断端部に発作波が認められ、前運動野まで切除を追加した(再手術後MRI)。 再手術後、発作頻度はさらに減少したが、消失には至らなかった。頭皮上脳波は、右前頭極、前側頭葉より発作波が起始しており、切除範囲周囲に残存する形成異常部位が焦点と考えられた。ECD-SPECTでは同部位に一致して、とくに 腹側に高灌流域を認めた。 1年0月、運動野を残し、残存する右前頭葉を切除した(術後の MRI) 。術直後、一過性の左片麻痺出現したが、すぐに回復し、現在はほぼ左右差無く、発作も完全に消失している。 本症例は、記録された発作焦点を切除したにも関わらず、発作消失に至るまで、3回の手術を要し、結果的には初回あるいは2回目の切除範囲が不足していたことになる。しかし、切除範囲の決定が困難な症例では、再手術によるリスクを考慮しても、一度で過大な切除を行うべきでないと考えている。 
 

 
(症例 2) 10歳女児

5歳時に左半身優位の硬直性痙攣で発症し、薬剤加療されていたが、二次性全般化を伴う発作が月に数回の頻度で起こっていた。その後、徐々に発作頻度が増し、外来の抗てんかん薬の調整ではコントロール困難なため、平成9年10月20日長崎大学小児科に入院。リドカイン、ミダゾラムの持続静注でも重積を抑制できず、平成10年1月5日当科搬送された。左咽頭、舌にかけてのミオクローヌスが持続するため、経口摂取が不能で、これに左顔面と左上肢のけいれんおよびミオクローヌスを、1日に20回程度伴っていた(経過表)。MRIでは、軽度の diffuse atrophy以外には異常所見はなかった。ECD-SPECTでは、右前頭葉のシルビウス裂近辺の運動野と前運動野付近に高還流がみられた。Eloquent area に焦点があるため、1月13日硬膜下電極留置術を施行し、脳波モニタリングおよび functional mapping を行った。発作起始部は 2カ所で記録され、一つは前運動野、運動野の顔面領域で、もう一つは知覚野に相当した。 
以上の結果から、1月27日焦点切除術を行った。運動野の切除は顔面領域にとどめ、前運動野と知覚野は発作波出現範囲を切除した(術中写真術後MRI)。 

 現在、咽頭の部分発作は消失し通学可能となったが、左上肢の部分発作が月に 1〜2回程度残存している。手術による、神経学的症状ない。本症例は、運動野を含み広い範囲に発作波が出現し、発作起始部が複数であるため、切除範囲の決定が困難であった。術後も痙攣発作があり、てんかん焦点が一部残存しているものと思われる。