難治性てんかんとは?
難治性てんかんの正確な定義は未だ確立されていない. 発作の頻度, タイプ, 重篤度およびquality of life (QOL) に及ぼす影響から評価されることが多い. 治療上のゴールは患者を発作から解放し, 患者を社会の生産的な参加メンバーにすることである. したがって, 難治性てんかんとは「正確な診断および慎重にモニターされた治療にもかかわらず, この目的達成ができない発作」 と定義できる. これには発作抑制の代償としての, 容認できない薬物毒性も含まれる. 実際の診療の目安としては, 「全ての(メジャーな)抗てんかん剤を, 耐えうる最大投与量まで使用しても発作抑制ができないもの」と定義し, 次の対策を考える事が多い.
難治化の要因
危険因子は, 
(1)6カ月齢未満の発症 
(2)基礎疾患を有するもの 
(3)出生前要因を有すもの 
(4)精神遅滞,運動障害の重複例 
(5)初診時脳波で広汎性発射
 
てんかん分類では, 
(1)Lennox-Gastaut 症候群(難治群の27%) 
(2)West 症候群(難治群の5% 
(3)乳児重症ミオクロニーてんかん (SME)(難治群の12%) 
(4)症候性部分てんかん(難治群の42%)
 
で頻度が高い. その他の小児難治性てんかん(症候群)として, 
(1)早期ミオクロニー脳症(Aicardi) 
(2)サプレッション・バーストを伴う早期乳児てんかん性脳症(大田原症候群) 
(3)徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS) 
(4)獲得性てんかん性失語(Landau-Kleffner 症候群) 
(5)ミオクロニー失立てんかん 
(6)ミオクロニー欠神てんかん
等があげられる. 
”難治性”の再検討
Aicardi は薬物抵抗性てんかんを「真の難治性」と不適当な治療による「偽の難治性」に分類し, その要因を検討した 結果, 偽の難治性の要因のほとんどは医師側にあり, 定期的にその要因を再検討することを強調している. 大塚らも難治群についてその要因を検討した結果, 患者側の要因(コンプライアンス不良)はほとんどなく, 医師側の治療が不十分または試みるべき方法が残されているものが41.5%を占めたと報告している. したがって, 偽の難治例をなくすための計画, 努力が小児科医に求められ, 必要なら入院のうえ諸要因 (表1) の再検討が望まれる.
表1 「偽の難治性」の要因
患者側の問題 
  1. コンプライアンス不良 
  2. 不規則な生活スタイル 
医師側の問題  1.診断の正当性 
  • てんかん分類,発作型の誤認,疑似発作との誤認 
  • 基礎疾患の見落とし(代謝・変性疾患,器質性脳病変)
  • 発作誘因の検討不足 
2.治療の正当性 
  • 不適当な薬剤選択 
  • 不適当な投与量 
  • 不適当な薬剤併用(薬剤相互作用,多剤併用) 
  • 治療計画への熱意不足 
 
難治性てんかん(慢性の発作持続)がもたらすもの
1.幼若期は, 急速な脳発達の時期であり, 早期の発作開始と存続は, 精神・運動発達遅滞, 退行をもたらす. 
West 症候群, Lennox-Gastaut 症候群, Landau-Kleffner 症候群のような年齢依存性荒廃性てんかんのあるものは発達遅滞または退行をおこす. 発作性脳波異常の持続も直接, 神経心理学的状態を悪化させうる(徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかん(CSWS)が 代表的な現象).大田原らの小児難治性てんかんの実態調査によれば、難治群の精神遅滞および運動障害の合併率(各々40%,30%) は発作消失群に比べると著明に高く, さらに発作存続によりこれらの合併率は各々80%, 50%に増加している。


2.未熟な大脳辺縁系は, 幼若期のストレスに弱い.

幼児期の持続の長い熱性痙攣は, 海馬萎縮, 細胞消失, 扁桃核萎縮と関係する. さらに, これが側頭葉(内側型)てんかんの原因になりうるという説もある. 難治性の側頭葉てんかんをもつ小児は, MRI上の海馬萎縮の発生率が高い.


3.慢性の発作と心理社会的障害 

心理社会的障害のリスクファクターは, 早期の発症,高い発作頻度, 大発作のエピソード, 発達遅滞, 学校に関連した問題等である. 発作コントロール不能, 発作の予測不能は無力感, うつ状態を生じる. さらに, 発作に対する恐怖, 他人に知られる事, 先生, 友人, 知らない人からの不用意な言動は心理社会的な孤立化をもたらす.


4.抗てんかん剤の多剤または大量長期投与 

難治例に対しては, 多剤または大量投与になる傾向がある. 慢性長期投与は学習障害, 行動異常, 発達や学業の能力に悪影響を及ぼす.

 
以上にあげた,難治性てんかんのもたらす悪影響をいかに防止,または減少させるかが大きな課題である.最近,脳外科治療の早期介入が支持 されるようになったのは, このような背景に加えて, 幼弱なほど神経系の可塑性が大きく, 外科損傷後の機能障害を残しにくく, また心理的, 社会的回復が容易であり, 術後の社会適応が期待できるからである. 


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