てんかんの外科治療:米国国立衛生研究所コンセンサス開発会議ステートメント 1990年3月19-21日
Surgery for Epilepsy. NIH Consens Statement 1990 Mar 19-21;8(2):1-20. ( http://text.nlm.nih.gov/nih/cdc/www/77txt.html )



 

てんかんの外科治療 

NIH コンセンサス ステートメント 1990年3月19-21日

要約

     てんかんの外科治療に関する NIH コンセンサス開発会議(Consensus Development Conference)は、神経学、神経外科学、心理学の専門家及びヘルスケア提供者が共に開催し、患者選択、管理、発作起始部の同定、適切な診断技術と術後評価を含むてんかん外科に関する問題を公にした。 パネルは、脳外科手術は薬物治療が失敗した場合の替わりの治療の一つであると結論した。 発作の頻度、重症度や脳障害、頻回な発作による外傷の可能性およびクオリティー・オブ・ライフへの影響などすべてが外科治療を決定する際に考慮されなければならない。患者の発作型に適した薬を使用して適切な服用量および血液レベルで適切な薬物治療が行なわれていなければならない。てんかんでない発作は除外され、発作を起こす原因を検出する診断的検査が実行されなければならない。 外科が考慮される場合、患者は神経学、脳神経外科学、神経心理学の専門家及びソーシャル・ワーカー、そして必要ならば精神病医を含むチームによって評価されるべきである。 結果の評価は、情報収集の標準化された方法を含んでいるべきである。 クオリティー・オブ・ライフおよび総合的な健康状態を評価する方法は、てんかんと他の慢性疾患の場合を比較することができる。 患者の家族への経済的、社会的影響への評価が含まれているべきである。

緒言

     てんかんは珍しいものではなく、米国民の約10パーセントは、その人生の一時期に少なくとも1回の発作を起こす。その多くの人々では1回あるいは少数回の発作で終わり、その後には繰り返さない。 反復する発作を持った人でも、約70パーセントは抗てんかん薬で十分にコントロールされる。 毎年てんかんになる150,000人の人々のうち、10〜20パーセントは、「内科的難治てんかん」である。 これらの患者およびそれらの家族の多くは、関係する人すべてのクオリティー・オブ・ライフを阻害する慢性の病気に対処しなければならない。 抗てんかん薬治療が失敗した場合、脳外科手術は治療の次の候補かもしれない。また、それは頻繁に行われている。 いくつかのセンターは成功例を報告し、多くの子供を含む増加する数の患者が外科に送られている。 改良された技術は、発作が脳(てんかん性部位)のどこで起こるかより正確に識別することを可能にした。また、外科の進歩は手術管理をより安全にした。 その結果、研究者は、米国において現在約500の年間手術数と比較して、毎年2,000〜5,000人の新しい患者が手術適応であろうと推測している。しかし、制御された試験は行われていない。患者の選択、外科手術のための患者評価方法の適用、手術方法や結果の最適な評価に関して研究者間に不一致がある。 これらの理由のために、このコンセンサス会議は組織された。 

     難治てんかんの正確な定義はない。 発作頻度、発作型、発作の重症度およびクオリティー・オブ・ライフへの影響が考慮される。 難治と考える前に、適確な薬が適当な量使用されたと確信できることが必要である。 複雑部分発作は、強直間代性けいれんや他の発作型のてんかんより難治化し易い。 抑制できない複雑部分発作では、その発作頻度が1日1回未満の場合から週5回以上の場合など患者によって異なっている。臨床症状も患者毎に異なっている。本人以外には気づかれないような発作もあれば、日常生活が混乱し社会生活を困難にするような発作もある。 1年に数回でも倒れてしまう発作で、繰り返す怪我や救急室への搬送は人生を悲惨にすることができる。 1年1回の発作さえ、運転免許証の所持ができない。 障害は、さらに、患者の家族、友達、教師あるいは雇用者の反応によって影響を及ぼされる。 これらの要因はすべて、外科治療を考える十分な理由になる。 外科治療を考慮する他の理由もある。 例えば、繰り返す発作は、進行性の大脳変性を生じ、より重度のハンディキャップをもたらすように脳へ悪影響を与えるかもしれない。 抗てんかん薬の慢性使用は中毒の症候群を引き起こすかもしれないし、学習、学校の成績、発達および職務遂行に悪影響を持っているかもしれない。 
 

     他方では、外科には考慮されなければならない危険およびコストがある。 外科手術適応が決められる前に、診断および今までに受けた抗てんかん薬治療の妥当性が確かでなければならない。 外科のための評価はいくつかの方法を含んでいる: ビデオモニタリング、脳の画像診断、および種々の脳波検査および神経心理学テストなどがある。 これらの検査の最良の組み合わせはまだ決められていない。術前に言語領域を同定する必要性についても合意がない。同様に、異なる種類の発作で最良の結果を得る特定の手術方法に関する見解の違いもある。 前側頭葉手術および他の皮質切除は、側頭葉及び脳の他の領域からのてんかん性部位の切除であり、複雑部分発作のために行われる。 脳梁離断術は、脳の右側と左側の連絡を切断し、ある種の全般発作に使われる; 脳梁離断術およ半球切除術はinfantile hemiplegiaでの発作に使用することができる。 

このコンセンサス会議は、次の質問を提出するように企画された: 

  • 患者はどのように選択されるべきか?
  • どの評価法がてんかん部位を同定するのに必要か?
  • どの手術が特定のてんかんに適切か?
  • 結果はどのように評価されるべきか?
  • 将来の研究の方向--制御下での研究が行われるべきか? そうならば、どの発作型についてか?
これらの質問を提出するために、NIH(the National Institute of Neurological Disorders and Stroke と the Office of Medical Applications of Research)は1990年3月19-21日にてんかんのための外科に関するコンセンサス開発会議(Consensus Development Conference)を召集しました。 1日半の専門家によるプレゼンテーションと参加者との議論のあとで、医学と関連科学領域の専門家、臨床研究者、及び一般代表によるコンセンサスパネルは証拠を検討し次の結論に達した。

患者はどのように選択されるべきか?

     不十分な発作コントロールの患者は別の治療法をしばしば求める。 発作の数あるいは重症度は、患者、家族あるいは治療する内科医にとっても受け入れ難いかもしれない。紹介される他の理由は、診断的検査結果で焦点性脳障害が発見されたこと、発作コントロール不良による不十分な心理社会的適応、薬による受け入れ難い鎮静作用あるいは他の副作用がある場合を含んでいる。そのような患者、特に執拗な複雑部分発作およびいあるタイプの全般発作は、外科治療の候補かもしれない。しかしながら、これらの患者は診断と治療の一層の評価のために成人あるいは小児神経学内科医に最初に紹介されるべきである。 これらの患者の評価および治療は、神経学内科医の監督下で、あるいは難治てんかんの包括的な診断と治療サービスを提供するてんかんセンターで行われるかもしれない。「難治」という用語は、私たちは、プライマリーケア内科医あるいは神経学内科医で利用可能な資源では、受容できる発作コントロールが得られないことを意味する。 有効かつ包括的であるために、センターのスタッフには下記を含むべきである: てんかんに関して特別の訓練を受け経験を持った神経学内科医; てんかん外科の経験のある神経外科医; 神経心理学者; また、学校や仕事における社会的、心理学的および精神医学的問題、ならびにリハビリテーションに対処するように訓練されたスタッフ。 さらに閉回路テレビと脳波(EEG)同時モニタリングを含む最新の神経生理学及び脳波検査; 核磁気共鳴映像法(MRI)などの神経画像診断; 及び神経心理学的テスト等の補助的な神経診断学的評価を実施するスタッフも必要である。 いくつかのセンターはさらに陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子放射コンピューター断層撮影(SPECT)あるいは他の大脳の血流量および代謝量を評価する方法を備えている。 患者が外科治療を考慮される前に、評価は下記を保証するのに十分でなければならない: 
  • てんかんでない発作は除外され、実際にてんかんであること; 心臓起源の失神、心因性発作および他の非てんかん性病態は、てんかんの発作を子細にまねることができる。
  • てんかんの発作型および症候群が明確にされていること;一次および二次性てんかん、部分発作および強直間代けいれんの発作は、異なる抗てんかん薬および異なる外科手術に反応する。
  • てんかん発作の代謝的あるいは構造的原因を明確にするための診断的検査が実施されていること。
  • コンプライアンスおよび治療効果の適切なモニタリング下で、適切な抗てんかん薬が合理的に試みられていること。
  • 患者および家族は、その発作性障害、可能な薬物治療および副作用、および外科治療のような別の治療法に関する情報を受け取っていること。 この評価の後に、発作が難治と判るか、薬治療が不満足な場合、適切な患者は外科治療を評価するためにてんかんセンターに紹介されるべきである。 内科的治療が一層の利益に恐らく帰着しないことが明らかになればできるだけ速く紹介さるべきである。 早く紹介すれば、コントロール不良の発作に起因する慢性の心理社会的および物理的問題の発展を防止できるかもしれない。
     共存する障害は、手術の決定に影響するかもしれない; それらは重度の精神医学的障害、高度の発達遅延あるいは進行性神経変性疾病を含んでいるかもしれない。 初期の評価と十分な内科的治療の失敗の後で外科治療は考慮されるかもしれない。 部分発作および二次性全般発作(局所性に始まり脳の両側へ伝播する発作)を持った患者は、潜在的な候補である。 二次性全般発作は、脱力、強直あるいは強直間代けいれんの発作の形式をとるかもしれない。 発作のある infantile hemiplegia の患者も、外科治療から利益を得るかもしれない。 次の発作型を持った患者は潜在的な候補である: 側頭葉起源の複雑部分発作あるいは他の焦点性発作; 脱力発作あるいは無動性あるいはミオクロニー発作の全般発作; またinfantile hemiplegia の部分発作。

どの評価法がてんかん部位を同定するのに必要か?

     正確な臨床的、電気生理学的データおよび画像データは外科治療を実行するのに必要である。 神経学的評価は他の神経学的疾患を識別し、除外するのに必要であるB すべての場合に、EEGとMRIは使用される。 追加のテストは、正確な局在化に多くの場合必要である。 次の電気生理学的技術は、診断およびてんかん性障害の局在性を確立するのに使用される: 
  • 脳波は必須で、断眠あるいは他の活性化技術と共に使われる。
  • ビデオ-脳波同時モニタリングは、てんかんでない発作を除外し、かつ発作の電気生理学的臨床特性を明らかにするために潜在的な外科治療候補の評価で広く使用される。 それはてんかん性脳部位の一貫性および確実性を立証し局在を明らかにするために頻繁に使用される。
  • 正確な大脳部位の局在化については、一部の場合には、他の多かれ少なかれ侵襲的な技術が、電気的な局在性を高い確度で立証するために使用される。 これらの方法は蝶形骨電極、硬膜下及び硬膜外グリッド電極、ならびに定位的に置かれた深部電極を含んでいる。 これらの手続きの必要性は個人毎に決められる。
脳画像技術

     画像技術はX線コンピューター断層撮影(CT)、MRI、PETおよびSPECTを含んでいる。 MRIが、脳腫瘍、血管奇形の描出にはCTより優れているので、CTは部分てんかんの診断では限られた役割を持っている。 内側側頭葉の硬化や萎縮の視覚化におけるのMRIの診断的価値は研究中である。 MRIは外科の切除範囲を手術後に評価するのに有用である。 PETは大脳の局所代謝量および血流量を測定する。 PETでの画像化は、焦点が発作間欠期に代謝低下の領域であることを確認することに成功した。 この観察は、切除外科のために部分発作および二次性全般発作を持った患者を選ぶのに使用されるかもしれない。 高いコストおよび複雑さのために、PET技術は一部のセンターだけに制限されている。 SPECTも大脳の局所血流量(それは大脳の代謝量とリンクし、てんかん焦点を識別するために使用することができる)を画像化できるので、脳の機能的画像として使用することができる。 SPECTは、従来の容易に利用可能な設備および放射性医薬品を使用する。 これらの化合物は発作状態および発作間欠期の状態を研究するのに使用することができる。 過去十年間で、この比較的手頃な技術は広く利用可能になった。 より多くの研究がSPECTがてんかん性部位の局在化にPETと同じくらい敏感かどうか決めるために必要である。 

     心理学的検査は、記憶と言語を含む様々な大脳機能の評価にとって必須である。 動脈内アモバルビタール・テストは、言語機能の局在と、記憶を手術前に評価するために使用される。 これらの診断方法は専門のてんかんセンターで利用可能でなければならない。 しかし、データはどの患者がさらに侵襲的で詳細な技術を必要かを決めるのには不十分である。 主要なてんかんセンターからのデータを組み合わせれば、これらの診断的技術の使用についての多くの解決すべきの疑問を明確にできるデータバンクあるいは登録の開発ができるであろう。

どの手術が特定のてんかんに適切か?

     この60年間、てんかんの外科的管理は持続的に発展した。 てんかんについての科学的な理解、てんかん焦点の場所を同定する新しい技術、および手術のリスクを低下させる方法に多くの進歩があった。 無作為化し制御された調査も大規模集団での臨床試験も行われていない; しかし、いくつかの外科的アプローチは、あるタイプの難治てんかんの管理に合理的で成功したと報告されている。 データは決定的でなく、主として単一施設での研究に基づいている。 手術前に検知された新生物あるいは血管奇形の患者でのてんかんのための外科は、器質障害の性状と部位と同様に発作障害にも依存する。 

     次の議論は、特に、脳障害部位の切除ではなく発作障害を緩和するという目的で実行される外科手術に関係がある。 現在まで集められたデータは、3つのカテゴリーの患者がてんかん外科に適した候補であると示唆している: すなわち、側頭葉あるいは、側頭葉外起源の部分発作、二次性全般発作あるいはinfantile hemiplegiaに関連した一側性の多病巣性てんかんである。 

部分発作の患者

     外科治療候補の中で最大のグループは、側頭葉起源の複雑部分発作を持った患者を含む。 手術前の評価は、腫瘍や血管奇形の患者を識別し、てんかん焦点が深いか(扁桃核あるいは海馬)、表面的か(皮質)どうか決めることができる。 手術成功を、抗てんかん薬をまだ服薬していても、また前兆がいくらか残ったにせよ術後5年間発作が無いものと定義すれば、適切に管理されたてんかん性脳組織切除の成功率は55から70パーセントである。一部の患者では、外科手術が心理社会的な結果を改善する。 しかし、これは未だ十分に研究されていない。 外科手術の合併症および死亡率は合わせて5パーセント未満である。 診断及び外科手術にかかる費用は、複雑でない場合の25,000ドルから、広範囲な手術前の検査が必要である場合の100,000ドル以上まで変わり、中央値は40,000 - 60,000ドルである。 
     臨床症状および診断的検査で切除できる領域のてんかん性部位を示す場合、前頭葉起源、および他の側頭葉以外の部位からの部分発作も外科的に治療されるかもしれない。 てんかん性脳組織の適切に管理された外科的切除は、30-50パーセントで改善(前述の定義で)が得られるであろう。 死亡率は2パーセント未満である。 また、費用はわずかに側頭葉切除のコストを越えるものである。 

二次性全般化発作の患者

     全般発作の何人かの患者は外科治療の候補かもしれない。 特に、レノックス-ガストウ症候群あるいは転倒発作を持った患者は脳梁離断で治されるかもしれない。 手術は、てんかん発作波の迅速な両側化を阻止するように考案されたものである。この手術は、暴力的な転倒発作のために頭部外傷をしばしば起こす患者で最も頻繁に勧められる。 発作障害は通常手術後にも残るが、発作頻度が低下し、症状も軽症化し障害が軽くなる。患者の選択や評価はまだ標準化されていない。 さらに脳梁をどれくらい完全に切断するかといった手術手技の違いもある。 手術後の死亡率は低いが重大な合併症は20パーセントもで生じるかもしれない。 いくつかのセンターでは、2段階の手術をするので、手術の費用は脳葉切除術よりも多くの場合高い。しかし、手術前評価の費用は多くの場合より少ない。 

Infantile hemiplegiaに関連する発作

     Infantile hemiplegiaに関連した難治の一側性で多巣性てんかんを持った患者では、半球切除術または脳梁離断術が有益かもしれない。 このような症例は希であるが、 外科治療されたてんかんの患者の約2パーセントを占めている。 成功は、発作頻度および発作型おける改善だけでなく行動学的改善によっても測られる。 合併症(脳表ヘのモシデリン沈着および水頭症)の回避が外科的手技選択の主な理由で、「解剖学的に完全」ではなく「機能的」半球切除術が現在のコンセンサスである。 50〜70パーセントの成功率は、過去に、解剖学的半球切除術で50パーセントにも達した手術による死亡および合併症の割合と釣り合っている。 初期の費用は脳梁離断術と同じようなものであるが、後で生じる合併症に対処する費用が増加する。

結果はどのように評価されるべきか?

     てんかんの内科的あるいは外科的治療の結果を評価したほとんどの研究は、単一の評価尺度を強調している: すなわち、発作消失あるいは頻度減少である。 この発作頻度の尺度を明確にする必要があります。 例えば、週2回の複雑部分発作のある人での50パーセントの減少は、1年当たり2回の発作がある人の50パーセントの減少と等価だろうか? 私たちは、患者がもっている発作の頻度と種類に関する情報を集める標準化された方法の使用を勧める。 

     発作頻度の重要性を認識しているが、私たちは将来の研究が個人のクオリティー・オブ・ライフおよび健康状態を評価するのに有効で定量的な方法を用いた「全体的な基準」を使用するように勧める。 これは、標準化された調査によって次のことを評価することによって実現される: 短期的な外科手術による死亡あるいは合併症(例えば死亡、麻痺あるいは術後感染; 肉体的健康(症状、機能、役割活動、睡眠-覚醒周期、可動性); メンタルヘルス(不安、うつ病のような症状とともに精神医学的診断); 認識機能、言語性記憶および非言語性記憶を含む神経心理学的評価; 社会的健康(対人関係、雇用、セクシュアリティ、運転免許証および集団相互作用); また全体的健康(健康感、死と痛みの恐れ、人生の充足感やエネルギー)。 子供の評価は、発達成長および学業成績の評価を含んでいるべきである。 

     各々の上記のものを評価するために、私たちはてんかんの患者が他の慢性の疾患の患者と比較できるように健康状態およびクオリティー・オブ・ライフの一般的な基準を使用することを推薦する。 てんかんはユニークな状態である。また、私たちは、さらに一般的尺度に加えて、前述したようにクオリティー・オブ・ライフのなかで発作を持った患者特有の様相に関して補足的情報が集められるように勧める。 この情報は患者自身に加えて家族からも集められるべきである。 てんかんが家族全体に影響するで、家族の健康は評価の一部であるべきである。 

     てんかん治療の評価は、患者、家族および社会への経済的影響の分析を含んでいるべきである。 経済的インパクトには、医療上の直接の費用(外科のコスト、および入院コスト、薬物治療コスト、 関連保健職員経費)に加えて、家族によるケアにおける貢献や患者の収入および生産力が将来増えたり減ったりするといった間接的費用を含んでいる。 

     評価は、数年間繰り返して行われなければならない。 治療センターからのデータは多数集められ、治療効果が複数の評価尺度で統計学的に評価されなければならない。 

     私たちは、個人個人が異なる結果を強調するだろうということを認識している。 ある人は、発作頻度の減少に最も関心があるかもしれない; 別の人は、記憶あるいは社会的機能に対する治療の影響にもっとも関心があるかもしれない。 難治てんかんの如何なる治療の評価もこれらの患者個人が優先する結果を明確に考慮すべきである。 

     これらの考察のすべてについては、異なる治療センターでのデータを組み合わせて比較することができるようにデータ収集の標準化された方法が必要である。 

将来の研究の方向--制御下での研究が行われるべきか? そうならば、どの発作型についてか?

  • パネルは外科手術が選択された患者にとって有益であると印象づけられるが、外科手術の最適のタイミングは知られていない。 現在の外科への紹介では、側頭葉切除を考慮された患者は、コントロールできない(難治)てんかんで10〜20年間経過してしまった後であることが多い。 複雑部分発作で、早期に手術を行なった場合と、最適化した内科的治療を行ない、後で手術した場合のどちらが、よりよいクオリティー・オブ・ライフおよび健康状態をもたらし、付加的な脳障害や慢性の社会的障害を防ぐことができるのかを検討できる制御した試験を推薦する。 
  • 手術前の評価に対する検査の選択が研究者で異なっている。特に、脳表からの発作時脳波記録や、侵襲的な頭蓋内電極による記録、PETあるいはSPECTを含めて、どのような場合により広範囲な検査が必要か知られていない。 これらの検査の価値を評価するためのプログラムが開発されるべきであり、それは開発およびアルゴリズムの評価を含んでいるべきである。 これには、定義、データ収集の標準化とデータの中央での解析が必要である。
  • 私たちは、他の慢性疾患患者での全体的健康状態、および機能を評価するために既に使用されている有効な方法に加えて、てんかんを持った人々のユニークな特性に敏感な特別項目を組み合わせる結果評価方法の開発を勧める。
  • 私たちは、特別の禁忌が任意の特定の手術法にあるか、またこれらの手術が結果として行動に影響するかどうか決めるために外科手術前、および術後の経過観察中に精神医学的機能および行動学的機能が系統的に評価されるように勧める。
  • 部分発作のための側頭葉手術では、標準および「あつらえ」切除が異なるグループによって使用されているが、結果は見たところでは類似している。 各技術が最大に有効な条件が、もし必要なら、最終的に適切な試験が計画できるように、切除範囲の記録および多変量解析を含む標準化されたデータ収集によって明確にされるべきである。 
  • 現在、てんかん外科が過去より子供でより頻繁に使用されるかもしれないので、私たちは発達途上の脳に対するコントロール不良の発作および抗てんかんの薬治療の影響を決定する追加の研究を勧める。 この研究には、これらに限られないが、連続的な神経発達学的評価、解剖学的及び代謝学的イメージング法、学校における認識-言語-学業達成度および子供と家族の心理社会的な適応の評価などが含まれる。 
  • もし、私たちが脳障害を防ぐ方法をもっと知っていたならば、あるいは私たちがより有効で、それほど有毒でない抗てんかん薬を持っていたならば、てんかんの外科治療は必要ではないかもしれない。 したがって、発達神経生物学、神経科学、細胞病理学、神経薬理学および予防疫学のようなてんかんの基礎科学的研究を支援することが必要である。 

結論と推薦

  • ほとんどのてんかん手術は洗練された医療センターで専門医師チームによって実施される。 手術の数は急速に増加している。
  • 現在使用されているように、難治てんかんのための外科は発作を止めるか、あるいはそれらの頻度を低下することができる。 全体的な健康状態およびクオリティー・オブ・ライフに対する影響は十分に研究されていない。 いくつかの異なる診断的検査および外科の技術が使用されているが、有効性において明らかには異ならない。
  • 手術が実行される前に、3つの絶対的な必要条件がある。 最初に、てんかんの診断を確認しなければならない。 次に、適切な薬物治療; すなわち、適切な薬が適切なタイミングでモニタされながら適切な量使用されるという治療が行われていなければならない。 最後に、電気臨床的な症候群が決定されなければならない。
  • 外科の需要が増大し、それがより多くの病院で利用可能になるとともに、治療の質が維持されなければならない。 手術は、現代的技術を装備し、術前の診断、内科的あるいは外科的治療の選択、包括的な術後評価および外来リハビリテーションができる学際的なチームを備えた病院で実施されるべきである。
  • リハビリテーションは、心理学的及び社会的適応、教育および職業訓練に関して、発作なしあるいは、ほとんど発作なしのライフスタイルへの患者の移行を含んでいるべきである。
  • てんかんの外科治療を提供するすべてのセンターあるいは独立した病院の内科医は、すべての患者に標準化されたデータ収集を使用することに同意すべきである。 データは機密性に対する配慮のもとで、集中的に登録維持されるべきである。 データは、人口統計学的情報、診断、病歴、術前の評価結果と少なくとも5年間のクオリティー・オブ・ライフおよび健康状態の術後評価結果を含んでいるべきである。 結果情報は外科を考えている患者に利益および危険に関する期待を評価検討することができるように供給されるべきである。 

Surgery for Epilepsy. NIH Consens Statement 1990 Mar 19-21;8(2):1-20. を翻訳したものです。 このページに関するご意見などは全て管理者にご連絡下さい。