難治性てんかんに対する脳梁離断術の長期予後

―多施設共同研究―

国立長崎中央病院脳神経外科 馬場啓至、小野憲爾
長崎大学小児科 松坂哲應
奈良県立医科大学脳神経外科 榊 寿右、星田 徹
国立療養所静岡東病院 三原忠紘、日吉俊雄
東京警察病院脳神経外科 真柳佳昭、長堀幸弘
旭川医科大学脳神経外科 田中達也、橋詰清隆

要旨

難治性症候性全般てんかん34例、前頭葉てんかん17例、乳児重症ミオクロニーてんかん2例の53例に対し脳梁前半部離断術を行い長期予後、手術適応につき多施設の結果より検討した。術後4例(7.6%)で発作消失、32例(60.4%)で有意に発作の減少が得られ、増悪例はなかった。発作型では転倒発作、非定型欠神発作、二次性全般化発作において特に有効であった。小児期と成人期手術例ではやや前者において成績が優れ、小児例では術後発達の改善が得られる可能性があり、早期の手術が有用と思われた。また、1歳以下の発作初発例では成績不良で、このような例では乳児期の重度の発達障害を伴っており、手術時の精神発達遅滞の程度より、乳幼児期の発達の経過が手術適応を決定するうえで重要と思われた。また、術後に全般性棘徐波が一側半球に限局化する例で結果が良好であり、術前の脳波の詳細な検討が重要と思われた。

はじめに

脳梁離断術は切除外科の対象とならない難治てんかんの外科治療法として重要なものであり、すでに800例以上もの多数例に対して行われてきた1)。しかしながら、手術適応については必ずしも一定の基準があるわけではなく、本邦においては症例数は限られている。今回、我々は多施設で行われた脳梁前半部離断例の手術結果および手術結果に及ぼす要因について検討を行った。

対象および方法

  1. 対象例の背景

  2.  

     

    脳梁前半部離断術後6ヶ月以上経過した難治てんかん53例を対象とした。手術時年齢は5-44歳(平均19.9歳)、発作の初発年齢は0.2-23歳(平均6.3歳)であり、術後のfollow-up期間は6-106ヶ月(平均43.2ヶ月)であった。53例中潜因性あるいは症候性全般てんかん(SGE)が34例、17例が前頭葉てんかん(FLE)、2例が乳児重症ミオクロニーてんかん(SME)と診断されていた。 
    脳波ビデオモニタリングでは強直発作が19例、非定型欠神発作が19例、転倒発作が21例、頭部前屈発作が9例、全般性強直間代発作が6例、ミオクローヌスが6例、単純部分発作が5例、複雑部分発作が16例、二次性全般化を伴う部分発作が10例で認められ、このうち単一発作のみの症例は14例で、39例では上記いずれかの組み合わせの発作を合併していた。 
    既往歴として低血糖、仮死などの周産期異常が7例に、熱性けいれんが3例、脳炎が4例、脳挫傷を伴う重症頭部外傷が3例、窒息が1例に認められた。また、5例は発作の初期においてWest症候群として治療を受けていた。また、1例では結節性硬化症を合併していたほか、2例はMRIにおいてdouble cortex syndromeと診断されていた。このほか、脳梁前半部離断術前に行われた外科治療としては1例で定位脳手術による視床破壊術が、2例で皮質焦点切除を受けていた。 
    術前検査は非侵襲的脳波ビデオモニタリングのほか、症例により異なるがCT,MRI、SPECT、PET、脳血管造影、アミタールテストを含む神経心理検査が行われていた。また、焦点検索の目的で12例では硬膜下電極留置による脳波ビデオモニタリングが行われていた。
     

  3. 手術結果

  4.  

     

    手術結果は発作の消失をfree(F)、発作の80%以上の減少をexcellent(E)、50-80%の減少をgood(G)、50%以下の減少をpoor(P)、発作の増悪をworse(W)として分類、評価した。

結果

  1. 手術結果

  2.  

     

    手術結果は53例中Fが4例(7.5%)、Eが18例(34.0%)、Gが14例(26.4%)、Pが17例(32.1%)であり、術後の発作増悪例は認められなかった。G以上を有効例とみなすと、53例中36例(68%)が手術により何らかの改善が得られたことになる。てんかん症候群に対する結果ではSGEではFが8.8%, Eが41.2%、Gが20.6%、Pが29.4%であった。 これに対し、FLEではFが5.9%, Eが23.5%、Gが35.3%、Pが35.3%とやや成績が劣っていた。症例が2例と少ないがSMEではG、Pがそれぞれ1例であり、余り有効とはいえないものと思われた。 
    それぞれの発作型における結果では発作消失の頻度は症例の多い発作型で見てみると転倒発作が最も高く、38.1%で消失し、次いで二次性全般化を伴う部分発作が30%、非定型欠神発作27.8%の順に有効であったが、複雑部分発作および強直発作は6.7%、5.2%と発作消失率は低かった。一方、脳梁前半部離断が有効でない発作型は複雑部分発作および単純部分発作であり53%、40%がPであった。また、単純部分発作は1例においてのみ術後発作の増悪が認められた。 
     

  3. 手術結果に及ぼす要因

  4.  
    1. 手術時年齢

    2.  

       

      手術時年齢を15歳以下の小児期手術例(22例)と16歳以上の成人期手術例(31例)で比較すると、小児期手術例ではFが4例(18.2%)、Eが6例(27.3%)、Gが6例(27.3%)、Pが6例(27.3%)であったのに対し成人期手術例ではFがなく、Eが12例(38.7%)、Gが8例(25.8%)、Pが11例(35.5%)であり、この2群間ではp=0.833と意差は認められなかったが、やや小児期手術例で優れており、とくにFの4例はいずれも小児期手術例であった。

    3. 発作初発時期

    4.  

       

      発作の初発年齢と手術結果を比較した結果をに示すが、発作初発が1歳以下の群では11例中5例(45.5%)がPであるのに対して、他の群では20-31%がPであり、この群では1歳以上の発作初発群に比較してP=0.019で有意に成績が劣っていた。 

    5. 発作持続期間

    6.  

       

      術前の平均の発作持続期間(標準偏差)はF群では平均5.75年(2.5)、Eが13.22年(8.96)、Gが15.89年(8.56)、Pが13.26年(6.72であり、F群はgood、poorの群と比較してP<0.05で有意に短かかった。 

    7. 術前の発達と手術結果

    8.  

       

      術前の発達のレベルはIQ75以上を正常、IQ50-75を軽度発達遅滞、IQ30-50を中等度発達遅滞、それ以下を重度発達遅滞として分類し、手術結果と比較した。IQの良い例において手術結果が良好な傾向にあったが、重度発達遅滞例においてもG以上の手術有効例が73.3%あり、明らかな相関関係は認められなかった。 

    9. 脳梁離断範囲

    10.  

       

      術後MRIでは9例で脳梁前1/2離断が、32例で前2/3離断が、7例で前3/4離断が、5例で前4/5離断がなされていた。 一方、手術結果は前1/2離断ではFが 0%、Eが55.6%、Gが22.2%、Pが 22.2%、前2/3離断ではFが6.3%、Eが28.1%、Gが37.5%、Pが28.1%、前3/4離断ではFが14.3%、Eが57.1%、Gが0%、Pが28.6%、前4/5離断ではFが20%、Eが0%、Gが0%、Pが80%であり、手術結果と離断範囲の間には明らかな相関は認められなかった。 

    11. 術前後の発作間欠期脳波所見

    12.  

       

      術前の発作間欠期の脳波所見では全般性棘徐波が記録された例が39例と最も多く、次いで両側前頭葉棘波焦点例が5例、それ以外の多焦点例が3例、両側前頭葉鋭波焦点例が2例、 1側前頭葉棘波焦点例が1例、1側前頭葉徐波焦点例が1例であり、2例では明らかな発作波は認められなかった。 
      術前後の脳波変化を症例の多い全般性棘徐波例で検討すると、術後長時間脳波ビデオモニタリングが行われた例が39例中35例あり、このうち全般性棘徐波が記録されなかった例が2例、全般性棘徐波が一側半球に限局化する傾向となった例(lateralized群)が17例、両側半球に非同期性に棘徐波が出現するようになった例(independent群)が13例、不変(unchanged群)が3例であった。これらの術後脳波変化と手術結果を比較すると発作波が認められなくなった2例では手術結果はFおよびEでり、lateralized群、independent群、unchanged群の順にPの例が増加しており、lateralized群とindependent群ではp=0.009で有意に前者において成績が良好であった。 

  5. 術後合併症

  6.  

     

    手術合併症としては術後片麻痺、動作が緩慢で自発性の低下、皮下膿瘍、硬膜下血腫がそれぞれ1例に認められたが、皮下膿瘍、硬膜下血腫はいずれも外科的処置にて改善した。 

考察

今回のSGE、FLE、SMEの53例に対する脳梁前半部離断術の結果では、発作の消失した4例(7.5%)を含め、34例(67.9%)に術後発作の改善が得られており、脳梁部分あるいは全離断例を含む1993年のEngelら2)の集計結果とほぼ同等の結果であった。また、発作型では転倒発作、二次性全般化を伴う部分発作、非定型欠神発作において特に発作消失率は27.8%-38.1%と高かったが、複雑部分発作、強直発作では発作消失率は5.2-6.7%と低かった。しかしながら、発作改善率は複雑部分発作、単純部分発作以外では70%以上に認められており、切除外科の適応のない例において脳梁前半部離断術が試みられるべき重要な手術方法であることを示している。 
手術結果に及ぼす要因のうち手術時期では小児期手術例と成人期手術例において有意差は認められなかったが(P=0.833)、小児期手術例において成績がやや良好であり、また、発作消失例は全例小児期手術例であった。今回の対象例は3例を除き種々の程度の精神発達遅滞を伴っていたが、小児期手術例では術後に発達の改善、社会適応が改善する例も多いことが報告されており3,4,5)、また、今回の結果においても発作消失例では有意に発作持続期間が短かったことからも、難治性と診断した時点でできるだけ早期に手術を考慮すべきものと思われる。 
従来より重度精神発達遅滞例では手術成績が不良であることが報告6)されてきたが、今回の結果においてもIQの良い例において手術結果が良好な傾向にあった。今回の対象例が示しているように、脳梁離断の対象例は発作が頻回であり、手術時には多くの例で精神発達遅滞を伴っている。我々の検討では乳幼児期の発達指数は発作の初発年齢が低いものほど低く、また、発作が頻回になるにつれ低下を示した。これらの例での脳梁前半部離断の結果は乳幼児期の発達指数と良く相関しており、ことに生後3歳までの発達指数が低い例では術後成績が不良であった7)。この結果は今回の発作の初発が1歳以下の例において有意に結果不良例が多く認められたことと良く一致しており、発作初発時年齢が低く、初期より発達遅滞を伴う例では重度の脳障害がすでに存在していることを示唆しているものと思われる。また、重度精神発達遅滞例では術前にこのような発達過程を把握することが手術結果の予測、あるいは手術適応を決定するうえで有用と思われる。 
脳梁の離断範囲についてはSpencer6)は部分離断より全離断の方が手術成績が優れていると報告しているが、永続性の脳梁離断症候群は避けられない。一方、最近の報告では脳梁前半部離断でも十分な効果が得られるとする報告も多く、離断範囲についても意見の分かれるところである8,9,10,11)。今回の例では離断範囲は前1/2から4/5までがなされていたが、手術結果と離断の程度には明らかな相関は認められなかった。これは手術を行った症例にばらつきがあることも一因と思われ、今後より均一な症例での検討が必要と思われる。 
脳梁離断後の脳波所見では両側同期性発作波の減少6,12)、発作波の一側半球への限局化13)、発作波の群発の減少6)などが報告されているが、このような脳波変化と手術結果との間には必ずしも一定した関連性が認められているわけではない6,14,15)。今回、術後脳波変化と手術結果につき症例の多い全般性棘徐波例において検討したが、術後発作波が一側半球に限局化したlateralized群では、両側非同期性に出現するようになったindependent群に比較して有意に手術成績が優れていた。このことはlateralized群ではもともとてんかん性異常が一側半球に存在し、脳梁を介して二次性同期性発作波を生じていた可能性がある。Norgenら16)は術後に両側同期性発作波が減少あるいは消失する例では術前の発作波が二次性同期性発作波であったと推測している。また、このように一側半球にてんかん性異常が存在する例は手術結果が良いとする報告は脳梁離断の初期の報告17,18)以来多くなされており、今回の結果と一致するものと思われる。一方、independent群では両側半球に広範囲にてんかん性異常が存在し、脳梁はこれら両側生じた発作波の同期性に関与していたものと思われる。以上の所見は術前の脳波の詳細な検討が手術結果を推測するうえで重要な因子となり得ることを示唆していが、全般性棘徐波を示す例では、この発作波が二次性同期性発作波かそうでないのかの区別が必ずしも容易ではない。我々はすでに術前脳波の多次元自己回帰解析の手法により術後脳波変化の予測が可能であることを報告13)しており、二次性同期性発作波の鑑別上有用なものと思われる。

文献

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Summary

Surgical outcome of anterior callosotomy in medically intractable epilepsy

Baba H1), Ono K1), Matsuzaka T2), Sakaki T3), Hoshida T3), Mihara T4), Hiyoshi T4), Mayanagi Y5), Nagahori Y5), Tanaka T6) and Hashizume K6)
Department of Neurosurgery, Nagasaki Chuo National Hospital1)
Department of Pediatrics, Nagasaki University School of Medicine2)
Department of Neurosurgery, Nara Medical University3)
National Epilepsy Center, Shizuoka Higashi Hospital4)
Department of Neurosurgery, Tokyo Police Hospital5)
Department of Neurosurgery, Asahikawa medical Collage6)
We analyzed outcomes of anterior callosotomy (AC) in 53 patients with medically intractable epilepsies including 34 patients of cryptogenic or symptomatic generalized epilepsy, 17 of frontal lobe epilepsy and 2 of sever myoclonic epilepsy in infancy. With mean follow-up of 43.2 months, 7.5 percent of the patients were seizure free and 60.4 percent had a significant improvement. None of the patients became clinically worse. AC was especially effective on drop attack, atypical absence and secondary generalized epilepsy. There was no significant difference of outcomes between child and adult. However, early operation during childhood may be necessary since possibility of psychosocial improvements after AC may be expected in child. Patients with seizure onset under one year old showed poor outcomes. Poor outcomes were also associated with sever psychomotor retardation during infancy rather than severity of mental retardation at operation. In postoperative EEG, marked lateralization of diffuse spike and wave to unilateral hemisphere was a good prognostic factor suggesting that preoperative analysis of EEG may be important for decision of AC.