てんかんの外科治療
馬場啓至(国立長崎中央病院脳神経外科)



 
てんかん外科はてんかんの包括医療のなかの一環として, 内科的難治の部分および全般てんかんを対象とし,手術による新たな障害を生じることなしに発作抑制効果を期待するものである. 近年この分野は脳波ビデオモニタリングによる発作時脳波, 症状の的確な把握による発作起始部位の判定, アミタールテストによる言語, 記憶機能の評価を含めた神経心理学的検索, 脳血流, 代謝, 組織の画像解析, 手術手技の改善などに伴い世界的に著しい進歩がみられている.
包括的プログラム内での外科治療には綿密な術前, 術中検査および術後の長期にわたる追跡が要求され, 基礎臨床面からの多角的かつ学際的なチームワークを必要とする. また, てんかん外科治療においては難治例を助けるのみならず, てんかんを窓としてヒトの脳機能の解明が行える特質をもつことを強調したい. 

目次
現状と役割 脳波ビデオモニタリング 側頭葉てんかん
側頭葉外部分てんかん 大脳半球切除術 脳梁離断術


(参考)

(1)てんかんの外科治療:米国国立衛生研究所コンセンサス開発会議ステートメント 1990年3月19-21日
(2)てんかん外科適応の原則 - 私たちの考え方
発作のコントロールが外科手術で可能で, 薬物治療など他の方法よりも 利益/損失比が大きいと期待できることが手術適応の基準です. 手術で脳の一部を切除すれば, 当然,  脳のその部分が果たしていた機能が脱落すると考えられます(場合によっては代償も期待できますが). この機能脱落には種々の程度があって, 明らかな障害がでる場合, 詳しい検査で明らかになる場合の他,現在の方法では検出できない場合などがあります. 手術による障害を最小にして生活の質( Quality of life, QOL)を低下させないことが大切なことには異論がありません. しかし,同時に手術しないで発作が持続するために生じる損失(手術で見込まれる利益)をも考慮すべきです. 例えば, 小児で5年後に発作がとまるにしてもその間に学習発達の臨界期を過ぎてしまい発達遅滞を残すことは大きな損失だと私たちは考えています. 抗てんかん薬の作用機序は必ずしも明らかでなく, 服薬による脳の高次機能への影響も報告されていますし, 臨床発作や脳波の発作波が直接脳機能に悪影響を与えていることもあるようです. まだ解決しなければならない問題がたくさんありますが, いずれにせよ, てんかんの人本人の将来にわたる QOL考慮して治療法を選択すべきだと考えています.
 
(3)世界のてんかん外科成績(1984年までの古い統計です) 

ホームぺージ