てんかん外科 現状と役割 脳波ビデオモニタリング 側頭葉てんかん
側頭葉外部分てんかん 大脳半球切除術 脳梁離断術

てんかん外科の現状と役割


1992年Palm Desertにおける第 2 回国際てんかん外科カンファレンス開催時の集計によれば、1985年には 53 施設であったてんかん外科センターが 1118 施設と倍増し, 手術症例も 1985 年までの約 30 年間 3446 例であったものがその後の 5 年間に 8234 例と急増している. また, 手術術式としては側頭葉てんかんでは選択的扁桃核海馬切除術が開発され, その有効性が確認されたほか, 広範囲にてんかん原性が存在する症例に対しても大脳半球切除術, 多脳葉切除術,  脳梁離断術が手術法の改良により合併症が減少し, より積極的に行われるようになった. このほか, 運動領や言語領など従来は切除不能とされてきた脳部位の焦点性てんかんに対しても軟膜下多切術が試みられてきている.  このように難治てんかん外科治療が盛んになった理由として,
(1)EEG-ビデオモニタリングの発達普及により発作の脳波臨床症状の分析が可能となったこと
(2)CT, MRI, SPECT, PETなどの画像診断が発達してきたこと
(3)抗けいれん剤の血中濃度測定が容易になり薬剤有効性の判定が容易になったこと
(4)発作の持続が神経心理および社会的な影響のみならず生物学的に進行性異常をきたす可能性があることが認識されてきたこと
 
をあげている.しかしながら, このように手術施設および手術症例数が増加してきているにもかかわらず, 北米において手術適応と推定される症例数は 10 万人におよび, 大部分の症例がまだ取り残された状態にある. 
一方, 日本におけるてんかん外科については徐々に増加してきているが的確な情報はない. 朝倉らのアンケート調査によれば 1989 年の時点で年間 5 症例以上の手術がなされているのは 3 施設にすぎず, 全国で年間50例程度の焦点切除, 側頭葉切除手術がなされているのみであったが, その後脳梁離断, 半球切除術が加わり 1991 年の時点では年間 150 例程度にまで増加した. しかしながら, 米国での年間手術症例数が 1985 年では 500 例, 1991 年では 1500 例と急増しているのに比較すると比べるべくもない. Engel らはてんかん外科症例が増加しない理由として, 発作をしかたがないものとして診ている, あるいは抗けいれん剤が有効でないのに漫然と投薬を続けるなどプライマリケアを受け持つ医師あるいは患者家族側に問題があることを指摘しているが, 日本ではこれに加えて, てんかん外科を行うのに必要な充分な設備, てんかん専門医および検査技師などのスタッフの不足, てんかんが外科治療の対象になり得るという情報不足, 必要とする多くの検査が健康保険で認められていないという財政上の問題など解決すべき問題が多く残されている.
てんかん治療の最終的な到達点は発作が完全に抑制され, したがって発作による精神的社会的ハンディキャップより患者が開放されることである. この点, 内科的治療, すなわち投薬により発作が完全に抑制される例は 50% 程度であり, 残りの症例は発作の頻度に差はあるが投薬にもかかわらず発作が持続すると推察されている. しかしながら, てんかんの専門医により適切な治療が行われた場合, 難治例は成人では 25.3% (94), 小児例では 13.8% (72) と, その頻度は減少する. また難冶てんかんの代表である複雑部分発作では症例の 60ー70% は投薬により発作が完全に抑制され, また投薬中止可能となる例もあるが, 5ー10% が難治例に移行する. 後者では発作の持続のみならず薬剤の副作用による社会的心理学的ハンディキャップ, さらに乳幼児では発達に及ぼす影響が問題となることはいうまでもない. てんかんの大部分は幼児, 小児期に発症し長期間の治療となるため, 小児科, 精神科, 神経内科, 脳神経外科のてんかん専門医による多角的総合的な精査が必要であり, 真の難冶例の抽出, 手術とその時期および手術適応, 手術方法の選択, さらには術後の経過観察など多くの解決すべき問題がある. 外科治療が難冶例の治療の最終点ではなく, むしろ治療の選択肢の一つであることを十分認識する必要がある. 術後の問題でも慢性疾患としてのてんかんから開放された場合おこりうる複雑な精神, 心理, 社会的な問題, また, 完全開放に至らない時の困難を含めたフォローアップなど前方視的かつ学際的なアプローチが術前より意図されることが望まれる. すなわち, 外科治療とその可能性はてんかん包括治療の一つの選択肢として, それに携わる医師のみならず患者および家族に理解されるのが理想である.


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