てんかん外科 現状と役割 脳波ビデオモニタリング 側頭葉てんかん
側頭葉外部分てんかん 大脳半球切除術 脳梁離断術

脳波ビデオモニタリング


(1)脳波ビデオモニタリングシステム
通常,脳機能と発作症状に精通した専門家がてんかん発作の場に遭遇し目撃できる機会は殆どない.てんかん発作は脳の神経機構の異常で生じるものであり,その発作症状には異常を生じた脳部位の機能が反映されているはずである. 発作症状の時間的推移を正確に分析記述できれば発作がどこで始まりどのように拡大したのかを知ることができるであろう.このことを可能にしたのが脳波ビデオモニタリングであり, てんかんの診断, 治療の上での役割は非常に大きい.
現在の市販の装置はビデオの音声チャンネルに脳波信号 を多重化して記録するものが多いが, てんかんの脳波のようなダイナミックレンジの大きな信号は忠実に再現できず, 脳波データの長期間の保存という点で問題がある. また, 発作の自動検知, 脳波解析を行うに当たっては脳波データのデジタル記録が必要となる. すでに, 発作の自動検知シス テムについてはいくつかの報告があり, さらにコンピュータ技術を駆使した長期監視と発作時の自動神経心理検査なども報告さ れているが, ここでは現在私共が使用している装置について紹介する. 私共は現在まで汎用のパーソナルコンピュータに光磁気ディスクなどの大容量記憶装置, AD変換器などの周辺機器を接続し, 長時間脳波ビデオ記録のほか誘発電位や脳波解析が可能な BIPS (A Brain Information Processing System) を開発し使用している. 大部分の機能をソフトウェアで実現しているため非常に柔軟性が高く, 汎用の機器用いているため市販の装置より安価となっている. 脳波計からのアナログ信号を AD 変換しファイルサーバのディスク装置に記録する. 一方,ビデオ信号はスキ ャンコンバータ, スーパーインポザーによりビデオ画像と脳波画像を重ね合わせビデオテープに記録する. さらには, パーソナルコンピュータ, ディスプレイ装置, 音声合成装置よりなる高次機能検査システムが発作スイッチにより起動され, 発作時の高次機能検査が可能となっ ている. 現在の機能としては EEG-ビデオモニタリングのほか, 各種誘発電位,発作検知のためのトレンドグラム, 事象関連電位などが可能であり, デ ータ処理プログラムとして周波数スペクトル(FFT 法,自己回帰モデル法), 相関分析, 多次元自己回帰モデルによる脳波シミュレーションなど多 くの機能を有している. トレンドグラムはそれぞれのチャンネルにおける任意の時間(通常 2 秒)の脳波の平均振幅をプロットしたもので,24 時間の脳波記録が 3m 程度の長さに圧縮し表示できるほか,脳波記録と並行して作成されるため, モニタリング終了時に直に発作時間を知ることが可能である. 現在までの経験では, ことに部分発作, 複雑部分発作でほぼ 100% 発作検知が可能であった(捕捉された発作記録の一例).
(2)半侵襲的および侵襲的電極
てんかんの病態を解明する上で,MRI, SPECT, PETなどの画像診断の進歩にくわえ,頭蓋内電極の果たした役割は大きい. 特に切除外科の対象例では正確な焦点部位の同定のほか,てんかん性病変の広がりや焦点の側方性の推定,皮質の刺激による運動領,知覚領,言語領同定のための functional mapping の目的で使用される. しかしながら,頭蓋内血腫,感染,髄液漏などの合併症を伴うため非侵襲的検査結果を充分検討した 上で,手術方法に応じた電極を使用すべきである.
a)半侵襲的電極
開頭術を必要としないもので, (1)蝶形骨電極, (2)卵円孔電極および (3)硬膜外釘電極がある. 蝶形骨誘導は局麻下に頬骨弓中央下縁より垂直に蝶形骨翼状突起外側板に向けて 4-5 cm 電極を刺入するもので,簡便であり側頭葉底面の脳波活動を記録するのに有用である. NLA 麻酔などを併用すると小児にも容易に行える. 市販のものもあるが私共は直径 0.25 mm のテフロンコーティング ステンレス撚り線の先端 5mm の被覆を除去し折り曲げ,これを 20G 静脈留置針の内筒に通したものを電極として用いている. 電極刺入後内筒を抜去すると折り曲げた先端がアンカーとなり留置される. 卵円孔電極法は側頭葉てんかんの焦点側の推定のため開発さ れた. X線透視下に経皮的三叉神経破壊術と同様の手技により卵円孔を 19G 穿刺針にて穿刺し, 3-4 極の電極をよりあわせた直径 0.4 mm の電 極を海馬の近傍の迂回槽に留置するもので, 頭蓋内電極に比較して開頭術を要しない. 海馬から離れているため焦点の同定という点で深部電極よ り劣るが, 焦点の側方性の推定という点で蝶形骨誘導よりも優れている. 刺入時に三叉神経の刺激による一過性の顔面痛を伴うことが多い.硬膜外釘電極法は開頭を必要とする硬膜外電極法あるいはスクリュー電極法を改良したもので, シリコン製の茸状の釘の先端にステンレスあるいは白金電極をとりつけたものを用いる. 局所麻酔下に皮膚切開を行ない,頭蓋骨に小穿頭を設け,ここに硬膜に接するように適当な長 さの電極を植え込む. 導線は皮下を通して取りだすため,頭皮上電極に比較して体動や筋電図の混入が少ない. 硬膜下格子状電極 に比較して焦点同定の正確さで劣るが, 頭部の広い範囲の脳波記録が可能で硬膜外血腫の危険性が少ない.
b)侵襲的電極
定位脳手術の手法あるいは最近ではCT, MRIを用いて脳の深部に刺入する深部電極,あるいは脳表に電極を配列する硬膜下帯状電極格子状電極がある.
深部電極は4-5極の接点を持つ電極よりなり, 定位的に海馬, 扁桃核などの脳の深部に正確に刺入し, 脳深部の脳波活動を記録するのに用いら れる. これは Bancaud,Talairach らにより stereo-electro-encephalography として開発されたもので, 主に側頭葉てんかんに対して焦点部の同定 のみならず, 発作の伝幡経路を見るのに有用である. このため, 通常両側対称性に海馬, 扁桃核, 前頭葉, 帯状回などに数本の電極を刺入する. 脳血管の損傷を防止するために脳血管撮影を行ない刺入点を決定するが, 側頭葉に水平軸方向, 前頭葉経由, あるいは後頭葉より海馬に並行に刺入する. さらには近年 Leksell の定位脳手術装置を改良したフレームをあらかじめ患者に装着した後, CT, MRI, DSA, PET の撮影を行ない, 全ての画像を同一平面上で再構成し, 深部電極刺入点を決定する multimodal image analysis system が開発されている.深部電極の欠点として は他の頭蓋内電極に比較し脳内血腫の合併症が高いこと, および functional mapping には適さないことが上げられる.
慢性電極として帯状あるいは格子状電極をはじめて使用したのは Goldring と思われる. 彼は局麻手術の困難な小児例に対して全麻下に硬膜外に格子状電極を入れ, 誘発電位による体性感覚運動領の同定および焦点部位の同定を行った. 現在では硬膜下電極として使用することが多い. 通常数 mm の皿電極を 1-1.5cm 間隔で配列したものを用いる. 帯状電極は小開頭あるいは穿頭により容易に挿入することができるが, 記録範囲が限られるため側頭葉てんかんにおいて焦点側が同定できないとき, あるいは側頭葉外焦点の可能性を否定する目的で使用する. X線透視下で電極を挿入し, 海馬傍回にそって小脳テント縁のところまで電極の先端が来るようにすることにより海馬に挿入した深部電極とほぼ同等の脳波活動が記録できる. 側頭葉外焦点例では帯状電極では焦点の同定は困難であり, より広く脳表を覆える格子状電極が有用である. 誘発電位による体性感覚運動領の同定のほか直接皮質を刺激することにより functional mapping が可能となるが, 通常大開頭を必要とする. いずれも, 電極の導線にそっての髄液漏や感染が問題となるが, 導線を皮下に 5 cm 程度通すことにより防止でき, 私共の例では 3-4 週間の脳波検査において特に問題を生じていない.

慢性頭蓋内電極の限界は記録部位が限られていることである. すなわち,埋没焦点や記録部位の外の皮質に焦点が存在する例では,伝幡してき た発作波を焦点と見誤る可能性がある. このため, 手術に当たっては頭蓋内記録のみならず発作症状, 画像診断,頭皮上脳波記録など充分に考慮する必要がある.

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