てんかん外科 現状と役割 脳波ビデオモニタリング 側頭葉てんかん
側頭葉外部分てんかん 大脳半球切除術 脳梁離断術

側頭葉外部分てんかん


      Engelの集計では側頭葉外焦点に対する手術例は焦点切除術例を加えても, 海馬扁桃核切除を含む側頭葉切除5430例に対して1513例と約1/3にすぎない. これは難冶性部分てんかんのなかで44%が側頭葉焦点例であるのに対し, 側頭葉外焦点例は31%( 前頭葉焦点 19%,後頭葉焦点 10%, 頭頂葉焦点 2% )と少ないこと, silent area の焦点例では発作波が焦点の外に伝幡して初めて発作症状が出現するため, てんかん焦点の同定あるいは広がりの推定が必ずしも容易でないこと, 運動領, 言語領など切除により重大な合併症を生じる切除不能部位に存 在するため焦点切除術が必ずしも行えないことなどがあげられる. 術前の検査としては側頭葉てんかんで述べたところとと大きく差があるわけではない. 頭皮上脳波記録のみでは焦点の同定あるいは焦点の側方性の決定が困難な場合, 最終的には頭蓋内電極ことに硬膜下電極による検索が重要となる. また, 頭蓋内電極を使用する場合でも, MRI, SPECT, PET などの神経放射線学的検査での異常部位の検索が有用である. さらに, 近年では定位脳手術用の頭部固定装置を装着し, MRI, DSA, SPECT, PET を一日の間に撮影することにより, 解剖学的異常と機能的異常を同一画面上に再構成することが可能となってきてお り, 頭蓋内電極の挿入部位, 切除範囲, 運動領などの決定などに有力な武器となっている.
(1)局所病変を伴ったてんかん焦点切除術
      難治例ではMRIにおいて腫瘍性病変, 血管奇形や皮質形成異常などの異常が発見されることが多い. しかしながら, これらの種々の脳内病変とてんかん発作発現機序との関連性は十分に解明されているわけではない. これらの病変は占拠性病変あるいは出血などの症状は伴っておらず, 症 状としてはてんかん発作だけで他の局所症状を示さない. このため外科治療の目的は発作を抑制することのほかに腫瘍であれば悪性化する可能性を防止できること, 血管性病変であれば出血の予防ができることなどの原因疾患の治療を含め手術方法を検討する必要がある. 手術方法としては病変部あるいはその辺縁部にてんかん焦点のある場合には (1)病変部のみの切除, (2)辺縁部のてんかん性の部分を含め病変部の切除を行う, (3)病変より離れた部位にてんかん焦点がある場合病変部および異なる部位のてんかん焦点を切除する, (4)病変部の切除は行わずにてんかん焦点のみを切除するなどの種々の試みがなされてきた. 最近の報告では病変部切除を重要視しているものが多い. 1986年 Goldring らは難冶てんかんを伴ったグリオーマ40例に対して病変部のみの切除を行い, 34例で発作が抑制されたことより, 病変部のみの切除で発作が十分抑制可能であると報告した. しかしながら, グリオーマでは術中に病変の辺縁を同定することは必ずしも容易でなく, 症例によってはかなり辺縁部の切除も行われている. CT, MRI誘導による定位的脳手術によりレーザーメスで病変部のみの切除を行った Casino らの結果では 23 例中17例で Engel の効果判基準 Class I-III(発作の消失-発作の有意な減少)の良好な結果が得られ, とくに 13 例 (57%) で発作が完全に消失した(Class I). しかし, 側頭葉内病変では側頭葉外の例に比較して成績が不良で, 手術成績と病変の部位に相関があると報告している. 病変部と伴にその辺縁部の切除を行った Boon らの報告では 83% で発作が抑制されているが, Awad らは完全に病変部が切除された例では辺縁のてんかん焦点の切除の程度と関係なく 94% で発作が抑制されたことから病変部の切除の重要性を報告している. また, Fish らは病変部が切除不能の部位にある例において脳波上てんかん性異常が認められた前側頭葉の切除を行ったが, 発作抑制率は 10% 程度と極 めて低く, やはり, 病変部の切除が必要と考えている. 病変部が側頭葉内に存在する時には, しばしば病変部とは離れた側頭葉内側より発作波が記録される. この場合, 病変の切除のみを行うか, 側頭葉内側をふくめて切除するのかについては異論が多いが側頭葉てんかんの項で述べたので省略する.
(2)軟膜下多切術(Multiple subpial transection, MST)
      従来, 皮質運動領, 言語領にてんかん焦点が存在する難治例は切除外科の対象外とされてきた. このような症例に対する新しい外科治療法として 1989年 Morrell らは軟膜下多切術を報告した. てんかん焦点と考えられる部位に 4 mm の直角に湾曲した特殊な transector を脳表に突き刺し, 軟膜下に灰白質のみの縦切開を行う. さらに, この切開をてんかん性異常の認められる脳回に 5mm 間隔で行うもので, 皮質の機能に必要とされる縦方向の神経の繋がりを温存し, 発作波の形成あるいは伝幡に重要とされる皮質の水平方向の線維を遮断する. また, この手技では軟膜下に灰白質の切開を行うため皮質の血行が温存され機能障害が生じにくい. Morrell らは 32 例の難治例に対してMSTを試み運動領, 知覚領では微細あるいは巧緻な運動機能の障害が, 運動性言語野では言語の流暢さの障害, 感覚性言語野あるいは角回では呼称あるいは言語変換の障害が認め られたが, いずれも重大なものではなく, 注意部深い神経学的検査においてのみ検出できる程度の障害であった. また, 5-22 年間の follow-up を行った 20 例では 11 例 (55%) で発作が完全に抑制され, 発作の再発を認めた 9 例ではいずれも術後になって初めて Rasmussen 脳炎やグリオーマなどの基礎疾患が発見された例で, MST 施行部位からの発作の再発は見られなかった, しかしながら, 多くの症例ではMSTと同時にてんかん焦点の部分切除がなされており, MST のみで発作が抑制されるのかについては今後の検討を必要とするものと思われる. 清水は運動領, 言語領焦点例のほか広範囲に焦点を認めた 34 例に MST を行い, 1 年以上 follow-up を行った 28 例において 23 例 (82%) で術後発作の改善が得られたが, 2 例において術後脳内血腫の合併を認めて縦方向の脳回にそった切開には注意を要すると報告している.

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