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側頭葉外部分てんかん 大脳半球切除術 脳梁離断術

大脳半球切除術


(1)大脳半球切除術の進歩
 大脳半球切除は右大脳半球の浸潤性神経膠腫を根治法として Dandy により1928年初めて報告された. 同様の報告は Gardner によってもな されたが, 難治てんかんの外科治療に応用したのは MacKenzie が最初である. しかしながら, 腫瘍例での半球切除は感染, 出血, 失語などの合併症のためもあり, 一般的には受け入れられなかった. 1950年になり Krynauw が infantile hemiplegia 例でてんかん発作あるいは行動異常を有する12例に対して大脳半球切除術を施行, 発作の抑制が認められたのにくわえ行動異常が改善されたことを報告, 以後広く本法が行われるようになった. 手術法としては尾状核, 大脳基底核を温存し前頭葉, 頭頂葉, 後頭葉および側頭葉の皮質, 白質を全て切除するという手術( 解剖学的半 球切除術)であったが, 手術結果は良好で 7-35 年間 follow-up された 27 例中 11 例 (41%) で発作消失, 12 例 (45%) で著明 な発作の抑制が得られた. しかし, 術後数年を経過して精神症状, 傾眠, 振戦, 失調症などを来し悪化する例が 20-30% に認められるようになった. 1966年 Oppenheimer と Griffith は大脳半球切除数年後より徐々に神経症状が悪化し死亡した3例で脳表のヘモシデリン沈着および切除腔内の慢性硬膜下血腫に類似した多数の出血点を伴う膜の形成を認め, 術後の悪化は切除による死腔内への出血の反復, 脳表ヘモシデリン沈着による慢性上衣炎などの結果髄液流出路が閉塞し, 二次的水頭症 によるものと考えた. 脳表ヘモシデリン沈着の合併は 18-33% と高率であり, 発症までの期間は約 8 年. このため, follow-up 期間の長い例ほど合併頻度も増加してい る. このほか, 本術後の合併症としてはヘモシデリン沈着を伴わない水頭症が高頻度に出現する. これは手術により天幕上クモ膜下腔が喪失するためと考 えられている. モントリオールでの長期 follow-upを行った 27 例では 14 例 (52%) に水頭症を合併したが, 脳表ヘモシデリン沈着に関連して生じた例が 9 例 (64%) で, 残りの 5 例 (36%) では脳表ヘモシデリン沈着を伴っていなかった.
 以上の合併症が大脳半球切除後の大きな死腔に由来することに着目し, 大脳半球をすべて切除するのではなくてんかん原性を示す部分のみを 切除する subtotal (multilobar) hemispherectomy が行われた. しかし, Rasmussen の 48 例では 1 例も脳表ヘモシデリン沈着は生じなかったものの従来の切除法に比して充分な手術効果が得られなかった. その後, 機能的大脳半球切除術が開発された. すなわち, 側頭葉切除後さらに中心溝を中心とする前頭葉, 頭頂葉切除を行い, 前頭葉極, 後頭葉を血行を温存したまま残し, 脳梁の全離断を行う. すなわち, (1)切除による死腔を最小限にとどめることにより脳表ヘモシデリン沈着を防止し, (2)残存前頭葉極, 後頭葉の機能遮断により解剖学的半球切除術と同じ効果を期待するものであった. 1974 年以後モントリオールで行われた 29 例 の follow-up の結果では1年以上 follow-up した 25 例( follow-up 期間平均 7 年)において 75% で発作消失, 21% において 80% 以上の発作の減少が得られ 解剖学的半球切除術と同等の発作抑制率であった. 術後合併症としては1例が術後早期に死亡, 2 例で水頭症によるシャント術を必要とし, 1例で死 腔内に膿瘍を生じたが, 脳表ヘモシデリン沈着は生じていない.

 これ以外の改良術式として, 半球切除後, 同側脈絡叢電気凝固, 髄液流出防止の目的でモンロー孔筋肉片充填, さらに硬膜下腔をなくす目的で 切除術後に硬膜を縫縮, 頭蓋底, 小脳テント, 大脳鎌への固定が行われた(Adams変法). この術式では大きな硬膜外腔が形成されるが脳表ヘモシデリン沈着は生じず, 平均 5.5 年の follow-up 期間で 10 例中 1 例に水頭症を生じたのみであった. さらに大脳半球切除後に全例脳室ドレナージにより硬膜下腔血 液貯留を防止, その後シャント術を行うことにより脳表ヘモシデリン沈着は防止できると Peacock らは報告しているが. 解剖学的半球切除後のシャント例は48%のみであ るので, 全例にシャントする必要があるのかが疑問であり, また, 術後の髄液感染率が 15% と高率であった. また半球切除による死腔を減らす目 的で側頭葉切除の後, 脳室を開放することなく半球皮質切除のみを行ない皮質下白質を温存する術式があるが,脳表ヘモシデリン沈着を防ぎうるとしても大脳鎌, 眼窩, 小脳テント面の皮質切除が技術的に困難である. いずれにしてもこれらの改良術式の手術成績 は follow-up 期間が短いため, さらに今後の検討が必要である.
(2)手術適応
 一側大脳半球の広範囲な病変に伴う高度の片麻痺を伴う例が対象となる. 実際には多くの例で半盲, 知覚障害も伴っており, したがって半球切 除術による神経症状の悪化が期待されない例が良い適応となる. 脳波上では一側半球に限局あるいは両側半球に及ぶてんかん性異常波が認めら れる. 正常側半球での脳波異常は棘徐波の二次性全般化であるのか, 病変側の焦点とは独立した焦点であるのか区別する必要がある. 脳実質破 壊が著しいときにはより著明な異常脳波が発作間欠期, 発作時に, むしろ健側において出現することがあり, 的確な発作起始部位の判定を要する.
周産期の障害による広範囲の孔脳症, 片側性脳萎縮による infantile hemiplegia のほか, 心臓手術後の脳血管閉塞, 広範脳外傷, 神経細胞遊走 障害としての片側大脳肥大 (hemimegalencephaly), 皮質形成不全 (cortical dysplasia) , 結節性硬化症, Sturge Weber 症候群, Rasmussen 症候群 に伴う難冶てんかんが対象となる.

幼児期左脳発症例では言語機能の異常が予想されるのでアミタールテストによる言語優位側決定の必要がある. Hoffman は 1 歳以下に手術を 行った Sturge Weber 症候群 11 例中 7 例においてIQが正常であったことより, 早期の手術により発達障害を最小限に止められることを示唆している. また, 6-8 歳以前の小児例では半球切除により言語運動中枢を反対側半球に移動させることが可能であるため, 特に左側半球起始発作をもつ進行 性神経疾患の場合に, 早期の手術がむしろ障害を軽度に止めうる可能性がある.
(3)手術成績
Engel らの1993年の集計では190例において発作消失67.4%, 改善21.1%, 不変11.6%と大脳半球切除術の成績は良好で, 側頭葉てんかんに対 する成績と同程度の成績となっている. 一方, subtotal hemispherectomy (multilobar resection) では発作抑制が 45.2% と不良である. 多数の手術例 を有するモントリオールでの結果では解剖学的半球切除術では発作消失あるいは著効が 86% ( 27 例中 23 例), subtotal hemispherectomyで は 68% ( 57 例中 39 例), 機能的半球切除術では 82% ( 17 例中 14 例)であり, ことに機能的半球切除術例では 14 例全例において発作が消失している. 疾患群では Hoffmann は Sturge Weber症候群12例中8例で発作が消失し, FreemanはRasmussen症候群 12 例中 10 例で発作の消失を報告して いる. さらに術後IQが 10 程度上昇するほか, 健側半球での二次的てんかん性障害の消失による行動異常の改善が期待される.

術後発作の残存する例では切除反対側のてんかん焦点が原因と考えられている. ときに, 切除側の発作が認められるが, これは残存する島皮質 の焦点由来で, 顔面に限局した短時間の発作である. 術後脳波所見では, 障害側半球の異常脳波の影響が消失するため, 反対側半球での背 景脳波活動の改善がみられる. 一方, 残存する前頭葉極, 後頭葉より棘波, 鋭波が持続することがあるが発作発射には至らない.

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